[旧記事]ラシェイニャイ -RASEINIAI-

FPS

Raseiniai-1941は,故障したKV戦車が橋頭堡を妨害する独ソ戦序盤のエピソードを
ベースとした,FHSWの初期開発メンバーであるBigV氏によって製作されたマップです.


ヒストリカル・ノート

“1941年6月22日、国境を踏み越えたドイツ兵が出会ったのはそれまで見たこともないような化物達だった――KV1,KV2重戦車の実戦参加である。

開戦の翌日、リトアニアでドイツ第6戦車師団(第4戦車集団所属)と赤軍第2戦車師団(第3機械化軍団を分割)は、ドゥビーサ川付近で最初の大規模な戦闘に入った。
チェコ製35(t)軽戦車と若干の4号戦車を装備する先鋒部隊に、20両のKV重戦車、80両のBT快速戦車、そして少数のT34中戦車が襲いかかったのだ。

第2戦車師団長のE・N・ソリャリャンキン将軍は、ラシェイニャイ市内の第6戦車師団とドゥビーサ川に位置するドイツ軍部隊を寸断するため、1両のKV2と若干の歩兵を送った。

同市は既に占領され、ドイツ軍はドゥビーサ川東岸に2カ所の橋頭堡を築いていたのだ。

翌朝、ラシェイニャイ市内から橋頭堡へと救援に駆けつけた12両のトラックはKV2重戦車の152mm砲に粉々に吹き飛ばされた。
このKV2重戦車は不貞不貞しくも市内から2つの橋頭堡へ通じる分岐点に居座っており、これを除かないことには橋頭堡との連絡は回復できないのだ!”

Whispers of the Muse – Raseiniai:Lithuania,25th June 1941より引用


FHSWにおけるラシェイニャイ

FHSWでは,市街地中央の交差点に陣取るKV-2重戦車を軸に,西と南から攻撃する独軍と,東から反撃するソ連軍が衝突する構成となっています.
2007年6月にβ1が公開され,ver0.261(2007年8月)から公式マップとして採用されました.
戦闘区域自体はかなり狭いものの,建物のオブジェクト(StaticObjects)が密集し,カスタムマップとして公開された当時もかなりの重さでした.
そのため,時間帯の変更(夕→夜)やオブジェクトが描画される距離(LOD)の短縮等が行われました.

KillerObject

また,細かなアップデートが繰り返されたver0.2系で,プレイヤーが多人数である時のみ発生するサーバーとの接続が切断されるバグの原因特定にかなりの時間を要した事も,記憶に残ったマップでした.
ForgottenHope(FH)Modの特徴の一つであるpushmapは,次の旗の範囲にpushcageという乗り物を置くことでプレイヤーを妨害し,決められた順序でしか旗を取ることができないようになっています.
このシステムは開けた場所の旗を覆う時には問題ないのですが,Raseiniaiのような入り組んだ場所に置かれた旗に対して使ってしまうと,旗を守らなければならないプレイヤーの移動も妨害してしまいます.
これを解決するために考えられたのが,pushcageの代わりにkillerを利用した方法です.
killerはpushcageのように移動を妨害しませんが,範囲内のプレイヤーを即死させる効果があります.
このkillerを旗の範囲に乗り物として置くことで,特定の陣営のプレイヤーのみを通過可能にしました.
ただ,このkillerを乗り物として扱ってしまった事が,前述のバグを引き起こしていました.
FHで用意されていたkillerはSupplydepotクラスであり,これをそのまま乗り物として
発生させる事は想定されていませんでした.
それでもプレイヤーが少人数の時は問題なく動作してしまったのが厄介であった所であった訳です.
最終的にはPlayerControlObjectクラスとしてkillerObjectを用意し,そこからSupplydepotクラスとしてkillerを呼び出す事で,不具合を起こさずにkillerの動的な切り替えを可能にしました.

バグ修正後,初期のバランスでは1番目の旗がなかなか落ちずに双方の削り合いが発生する展開が多々有りました.
この展開になってしまうと小火器の火力の関係から連合軍が削り負けとなってしまいます.
このため,1番目の旗は容易に落とせるよう修正されています.
その後は3,4番目の旗が硬すぎるため,枢軸軍が負けとなる展開が多く見られました.
特に南の4番目の旗は奥に置かれ,防御側の射線がよく通る位置となっていました.
このため旗位置の変更も行われています.
マップの本来のコンセプトである,「合流を阻止するKV戦車」を活かすためには,
枢軸軍が戦車を残すように進軍する必要があり,そのためにはやや攻撃が有利である構造が望ましいと考えました.

製作当初からバグと戦い続けていたマップですが,意欲的に新技術に挑戦し,獲得されたノウハウが現在のFHSWに活かされています.
市街地構造や南からの増援のギミック等,マップを製作するにあたって参考となる技術が多々含まれており,私もかなりの要素を参考にしたマップの一つです.

タイトルとURLをコピーしました