コンクリートジャングルの奥地に『ぼっち・ざ・ろっく!』は実在した

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気をつけろ そのドアの隙間は分断された現実(セパレート・リアリティ)だ

― P.T. (2014)
2023/08/19 歌舞伎町タワー

2023/8/11~20にTHEATER MILANO-Zaで公演された舞台『LIVE STAGE 「ぼっち・ざ・ろっく!」』を見に行きました。この舞台は原作漫画とアニメ版の『ぼっち・ざ・ろっく!』をベースとしてつくられたいわゆる『2.5次元』の作品ですが、元の内容を知らない方でも楽しめるような構成になっています。実際に原作を知らない方を連れて見に行きましたが楽しんでいました。
記事の最初はネタバレ無しで見どころを、残りはネタバレ有りで色々と書きたいと思います。
興味はあったけどまだ見ていないという方は、千穐楽(最終日)の昼夜公演をディレイ配信で追いかけることができます(8/29まで)。
ここを逃すと、恐らく2024年2月のBlu-ray/DVD発売まで見返せるタイミングは無いはず。

舞台の見どころ

キャスト陣の熱演

キャストの皆さんが原作漫画やアニメ版のキャラクターを熱心に研究されていて、『実在するならどのような人物か』を舞台上で見せてくれます。と書くとありきたりになってしまいますが、アドリブやトラブルのリカバリでここは絶対台本に無いはずなのに‥という場面でもそのキャラクターがするであろう振る舞いを見せてくれます。

生演奏

バンドものの作品なので何度か演奏のシーンがあるのですが、恐ろしいことに全てその役のキャストが実際に生演奏しています。しかもただ生演奏するのではなく、そのキャラクターとしての演奏を見せてくれます。演奏のパフォーマンスは本来奏者が持っている癖や奏法(スタイル)によって発揮されるものですが、演じているキャラクターの奏法に寄せて、(しかも舞台なので1発勝負で)演奏しています。そんな事が人類に可能なのかは‥配信を見て自分の目で確かめよう!

舞台装置

舞台装置が工夫されていて、高速で場面が転換されていきます。数点の大道具でもすぐあのシーンだと分かるはず。アクションカムやプロジェクションマッピングを活用する演出もあり、現代の舞台を感じられます。

— ここまでネタバレ無し —
以降は発狂するぼざろオタクの感想コンテンツになります。

池(沼)の入り口

感想へ行く前に舞台を見るまでの経緯を書いておきます。
なお楽器を持ってステージに立ったり演劇(裏方)の経験はありますが、2.5次元舞台を見たのは初なので変なことを書いてるかもしれません。また、配信で見返すことができない公演回は記憶で書いているので、結構主観が入っているかもしれないです。許してください。

ぼざろの池へ

2022年の秋、すごいライブシーンのアニメがある、とTwitterで動画が回ってきた。アニメ5話の『ギターと孤独と蒼い惑星』の演奏シーンの公式切り抜き動画だった。

【LIVE映像】結束バンド「ギターと孤独と蒼い惑星」LIVE at STARRY / 「ぼっち・ざ・ろっく!」劇中曲

この演奏シーンがいかに現実的に正しい描写であり再現度が恐ろしいかについては有識者や中の人達が語っているので私から付け足すことは無いが、一番心が打たれたのは動画の1:08辺りに登場する『音で振動するペットボトル』のカットだった。あのカットを見た瞬間に私の心は過去に行ったライブハウスへ飛び、爆音を全身で浴びたときの事や、昔弾いていたエレキベースの弦の振動を思い出していた。
ああ、この作品を作っている人たちはバンドを理解してアニメという世界に再構築しているんだ、と。
その後はアニメを最終話までリアタイし、8話の某シーンの緊張でおかしくなりそうになったり、12話で涙が止まらなくなっていた。
更には原作単行本や原作者/監修者の配信だったり、『ぼっち・ざ・らじお!』を追っていた。
(1回だけラジオネームでしわすさんが登場しますが、私ではないです!)

結束バンドLIVE-恒星-

2023年の春、アニメ放映終了から約半年が経過していたが有り難いことに関連イベントは継続していた。そしてライブイベント『結束バンドLIVE-恒星-』が開催された。公演はZepp Hanedaの1回のみで、現地抽選は外れてしまったため配信で鑑賞していた。
このライブは各キャラクターの楽器奏者と声優、両方の『中の人』が登場する形式で、結束バンドがライブをするならこんな風なのか、と実在性を強く感じることができた。後は現地勢の盛り上がりが凄くて羨ましかった。次のイベントは現地に行きたいと考え始めていた。
関係者席で原作勢が飛び跳ねすぎてライブカメラを遮っちゃうエピソードも微笑ましすぎる。あの盛り上がりを思い出したくて、今もライブのセットリスト順で結束バンドのアルバムを聴いたりする。
なおライブの再配信やBlu-ray/DVD化は現時点で発表されていない。また見返したい・・

舞台

2023年の8月、私は壊れていた。仕事は多忙を極めた上、流行り病に罹って高熱を出し、嗅覚を一時的に失った。味覚は(もしかしたら若干麻痺していたかもしれないが)正常であったのに、何を食べてもおいしく感じない。つまるところ、味というものは味覚のみで感じているのではなく、五感を使って感じているということを改めて分からせられてしまった。

舞台版ぼっち・ざ・ろっく!の準備が進んでいるという話は6月頃に告知されていた。正直に言うと不安だったが、舞台演出が評判の良い『リコリス・リコイル』の方と知ったので、元から2.5次元舞台が好きな人向けにチューンされるんだろうなと想像していた。

お盆休みは病み上がりの体力回復に使おうと思っていたので、あまり出歩かずに過ごそうと考えていた。そんな中、舞台公演の初日を690円でライブ配信するというぶっ飛んだニュースが入ってきた。最初は意図が分からなかったが、現地へ来てもらうためのきっかけとしたかったのか、あるいはニュースに取り上げてもらっての話題作りかと想像していた。とはいえこの値段なら1回見てもいいかなと考え始めていた。
他の事をしながら配信を買うかどうか悩んでいたとき、舞台配信の感想がX(Twitter)に流れ始めていた。こういうものの感想はだいたい賛否両論になると想定していたが、タイムラインに絶賛の声が溢れていた。これは買って実際に確かめるしか無いだろう・・と購入画面を開いた。

初日配信(8/11)

ぼっちちゃん達が実在していた。それはキャラクターのセリフや声、見た目、動きがそっくりという事だったり、アニメ版の要素をよく舞台に落とし込んでいた点にもあると思ったが、何より演奏時の振る舞いが全員本人に見えてきた事が一番大きかった。そしてこれを690円で見てしまったことに対して若干の罪悪感が湧いてきていた。この時点で8/19の昼公演に行く決心を固めたが、恐らくそこまで待てないだろうと思い8/15の現地公演を予約して、初日配信の2周目をスタートしていた。

現地4日目公演(8/15昼)

そもそも台風で劇場にたどり着けるのか?という心配があったが、当日の午前中にはダイヤ通りに電車が動いていた。もしかしたら前日入りを考えていた遠征勢は来られなかったかもしれない。

開場時間5分後に現地入りして物販コーナーへ直行したが、列の2,3人前でラバーバンドが売り切れてしまった。仕方ないのでパンフレットや他のグッズを買い、ドリンク引き換えチケットを使いつつ劇場の2階席へ。前情報でオペラグラスはあった方が良いというのを見ていたが、特に準備はしなかった。寄りの画は配信時に見ていたので現地では全体を俯瞰して見たかった。

公演が始まってぼっちちゃんがギターを弾き始める(押入れなので正確には弾き始めを見ることはできないが)。音が良い。明らかに配信と違う上にすごく格好良く見える。後は照明が当たっていない(=カメラがズームしていない)シーンでも演技を続けていて、キャラ同士がどういったやり取りをしているのかも毎シーンの楽しみになった。後は、初演と比べてセリフとセリフの間の取り方がうまくなっているように感じ、客のリアクションを引き出してしゃべってくれているように思えた(配信には客の声が乗りづらいというのもあるかもしれないが)。逆に初演は緊張してたんだなと思いを馳せていた。きくりさんの客いじりが最前席で始まってうらやましいな~と2階から眺めていた。

アニメ7話のシーン、虹夏ちゃんと喜多ちゃんがぼっちちゃんの家に遊びに行く場面が始まった。配信を見ていたので展開は分かるはずなのに、動きが面白すぎていちいち笑ってしまう。
ふたりちゃんが下手側から出てきて自己紹介をするシーンで場面が固まった。子役の方がセリフを思い出せなくなってしまった。どうすればいいんだぁ・・と脳内でぼっちちゃんが走り回っていた。
ここで喜多ちゃんが『お名前なんて言うの?』とふたりちゃんに話しかけた。確かに喜多ちゃんならそういう事を言いそう。この時点で展開は台本から離れ、アドリブが始まったのだ。
『ええっと・・後藤ふたりです!』名前を思い出してくれて良かった。続いて虹夏ちゃんが『犬は何て言うのかな?』と続け、『犬はジミヘン!』と言ってくれた。軌道は無事に台本に戻ったのだ。ここで観客席から拍手が聞こえてきた・・温かい。そして上手側からぼっちちゃんが出てくるけど結構イキってるしセリフを噛みまくって『あっすみません』とか言っている。もしかして自分の方に注目を向けようとしてる?(ように見えた)。

ぼっちちゃんの超絶ギターソロが始まり、『あのバンド』の演奏がスタートした。演出の都合、下手に演奏していた『ギターと孤独と蒼い惑星』と明らかに音圧が違う。
ドラムセット。マイクが付いているとは言え、生音がダイレクトに響いてくる楽器だ。虹夏ちゃんのバスドラムが鳴った瞬間、私はアニメで見たSTARRYのペットボトルになっていた。音で体が振動していたのだ。音は聴覚だけでなく、触覚でも感じられる。それが配信では感じられない、ある種『麻痺』していた感覚だった。ああ、これがライブだったんだ・・と、曲の格好良さに加えて脳内で謎のフラッシュバックが始まり、情緒が滅茶苦茶になっていった。

カーテンコールが始まってみんなが出てくる。ぼっちちゃん役の守乃まもさんが、『あっ台風は西の方に逸れたんですかね?この作品台風に呪われてるのかなって思ってたんですけど何とかなって良かったですね』みたいな事を言い始めた。何言っても面白いのずるいよ。。
後はゴミ箱に入りながら劇場の完熟マンゴースムージー旨いぞと宣伝していたのを思い出したので、次に来た時に飲んでみようかなと考え始めていた。文章にすると意味不明だが全て正しい。19日の昼は現地に知り合いも連れて行く予定だったのでリピーターチケットを2枚購入して帰路についた。19日はまた現地だし、最終日の千穐楽は配信で見ればいいかなと考えていた。

この辺りで守乃まもさんがどのような人物なのか気になり始めていた。舞台のパンフやネットのインタビュー、舞台稽古の記事を漁り始め、経歴不明の引きこもり天才ギタリストが生演奏でギターを掻き鳴らしていた事を知る。生き様があまりにも格好良すぎる。。

8/17 10:00

8/15の公演や出演者の情報を知るにつれ、千穐楽(8/20)も現地で見たい気持ちが膨らんでいた。昨日の時点で千穐楽の夜公演のチケットは売り切れていたが、振込の関係等でチケットの戻りが10時にあることを掴んでいた。時間になった瞬間にブラウザの更新ボタンを押し、やや固まった後に残チケットの表示がXから△に変わったのを見てチケットを購入した。でっでも夜に行くなら昼も行きますよね?と脳内のぼっちが話しかけてきたので千穐楽の昼公演も勢いで買ってしまった。そうなると19日も夜に行きたくなるのでは?と思いそちらも購入した。全く後悔していない。

8/19 昼公演

ラバーバンドが既に売り切れている時間に入場したため、物販は諦めてフリードリンクを引き換えた後に1階席へ向かった。2階席より全体は見渡しにくいけど、細かい動作は見やすい。
『せっ世界平和を伝えたくて・・』のシーンで階段を登るぼっちちゃん。前に見たときとポーズが違うような・・何故かヨシッ!をする現場猫みたいなポーズで言っていて内心爆笑していた。見返せないのが惜しまれる。

アニメ7話のシーンで喜多ちゃんと虹夏ちゃんが和室に到着して、ぼっちちゃんが飲み物を取りに行く。確かこの後にふたりちゃんが出てきて・・あれ、出てこない。何かがおかしい。
少し後に知ることになるが、ふたりちゃんのマイクにトラブルが発生していて音声を拾えない状態になっていた。虹夏ちゃんが『なにこれ?』と結束バンドの集合写真を喜多ちゃんに渡し始める。台本に無い展開が始まった・・マイク修理の時間を稼いでいたのだ。『何かいっぱいありますね・・』アニメだと集合写真をこするシーンはあるが、舞台では無かったはず。アニメの展開が頭に入っている・・。『私、後藤ふたり!』このあたりでふたりちゃんが登場する。音声はマイクに拾われていない。マイク修理は無理と判断して、自分の声だけで劇場にセリフを響かせている。舞台役者だ。
その後、ふたりちゃんが喜多ちゃんの膝に座って話すシーンは、喜多ちゃん用のマイクで音を出しているように見えた。臨機応変がすごい。

アンコールは1階通路に演者さんが出てくるが、すぐ近くに星歌さんが来てくれた。タオルを振ったら手を振り返してくれて感動していた。

カーテンコールでは守乃まもさんが『あっすぐ外で踊ってる人がたくさんいますね』みたいな事を言っていた。実際に会場の外では盆踊りのセッティングをしていた。相変わらずぶっ飛んでいる。
(カーテンコールは19日昼夜の記憶が混ざって逆転してるかも。違ったらごめんなさい)

8/19 夜公演

なるべく開場と同時に入場してすぐ物販コーナーへ。あまり人が居なかったのでオーダーシートとにらめっこする時間もなくすぐレジ前に行ってしまった。ラバーバンドを4つ購入したが喜多ちゃんが2つ出て虹夏ちゃんが出てこなかった。更に勢いで4人のアクスタも買う。人生初購入のアクスタが2.5次元の役者さんになるとは思っていなかった。ラバーバンドは明日に再度挑戦するかな、と考えドリンクを引き換えて2階席へ。

ここが初めての現地夜公演になったが、客席の盛り上がりが凄い。小さい笑いどころでもみんな爆笑しているし、さらに細かい箇所でもクスクス笑っている。OTOステのシーン、タモさんが8/19は俳句の日ということを紹介していた。ここはぼっちの妄想シーンのはずなので、ぼっちちゃんの雑学知識からセリフを出していることになる。なるほど解釈一致。

山田が草を持って登場してきた。草を食べるシーンはみんな毎回爆笑している。が、草を食べきれずそのままぼっちと会話を始めて、更にみんな笑っている。このアドリブは20日昼にも見ることができるけど、この日はセリフを言い直さずにそのままシーンが進行していったのでシュール度がすごい。

カーテンコールはテンパった守乃まもさんがファン1号2号に『どっどうでしたか』と(いつものことだけど)いきなりパスをしていた。『私達はファン1号2号ですけど、客席にいらっしゃるのは3号、4号・・みんなファンn号です!』客席で拍手が起こる。粋すぎるお言葉・・。
まもさんがぼっち・ざ・ろっく!で関わる人がみんな優しいですと言っていた。今までどんな修羅場をくぐってきたんだろうと考えてしまい、もらい泣きしそうだった。

8/20 昼公演(千穐楽)

いつも通り物販へ。ラバーバンドを4つ注文したら虹夏ちゃんが出てきてくれて4人揃った。そして忘れず完熟マンゴースムージーを注文する。マンゴーのほのかな甘味とアイスのシャリシャリ感がたまらない。良かった。ドリンクを引き換え2階席へ。

アニメ7話の舞台転換でぼっちちゃんの和室が回転して出てくる。が、何かおかしい。壁の飾り付けの(よりによってぼっちちゃんカラーの)風船が外れて舞台手前へ飛んでいく。ぼっちちゃん、遂に風船の姿になってしまった・・が、そこは後の演出で邪魔になる位置だ。『なにこれ?』と虹夏ちゃんが風船を拾い上げて喜多ちゃんとキャッチボールを始める。当たり前だが、台本には無いリカバリだ。脳内で舞台役者凄い・・と語彙力を失っていた。その後、針を持っているぼっちちゃんに風船を投げつけて破壊してもらい、謎の空気になっていたのが面白かった。(なお、配信でも後藤父が想定以上に飛び散った風船の残骸をそっと拾っているのが見える。優しい。)

ライブ1曲目、『ギターと孤独と蒼い惑星』が始まる。ここは緊張で演奏がずれる場面だけど、何だかいつもよりずれているような・・?演奏が完全に崩壊しないようなレベルでドラム音のタイミングや喜多ちゃんギターのチョーキングをずらしている。奏者同士の信頼が凄い。

アンコールの『Distortion』が終わっても拍手が鳴り止まない。舞台袖から4人が戻ってくるが・・いつもと違う。グッズのタオルを持っていた。先の展開が読めなくなり、マジか・・みたいな悲鳴を出してしまった。そして完全版の『ギターと孤独と蒼い惑星』で盛り上がった。これがあるからライブのシーンではあそこまで崩せて演奏できたんだなあと納得しながら感動していた。
2階席だったのでスタンディングできなかったが、なんと2階席の通路にきくりさんとギタ男が来て手拍子をしてくれた。嬉しすぎる。(ここは配信に写っていなかったけど、2階席のカメラがこっちを向いていたので円盤で見られるかもしれない)

8/20 夜公演(大千穐楽)

入場後にドリンクを引き換え、1階席へ滑り込む。ついにこれが最後か・・と始まる前からとても寂しい気持ちになっていた。

『あっこの人たちは舞台版イマジナリーフレンドです!』で拍手が起きる。公演回によっては拍手が起きないこともあったが、満場の拍手。観客のボルテージが凄い。やっぱり何回も来てるお客さんが多いのかな。
OTOステのシーンの粋なアドリブはみんな全力でレスポンスしていた。観客の一体感が高まっている。

最後のアンコール、『青春コンプレックス』が始まる。1階席で割とひとりちゃんが見える位置だったので最高の気分だった。実は割と右よりの座席だと(後ろは完全に閉じていない)ダンボール内で演奏するひとりちゃんも見ることができる。
みんな楽しそうに演奏していて、すごく気持ちが乗っていてただただ最高だった。
まもさんが帰っていくときにサイン入りのピックを最前席の人にプレゼントしていた。これはもう振る舞いが本物のロックスターだ。そして最後の最後にまもさんが土下座したとき、手の角度がアニメ12話の土下座と一緒で感心と感動が一気にきて感情がよく分からないことになってしまった。

後は配信に残っていなかったので書いておくが、舞台が暗転して配信が切れた後、観客の誰かが再度『ありがとう!』と叫び、最後の拍手が会場を包んでいた。温かいよ・・

まもさんは公演が終わったら引きこもりに戻る宣言をしていたので、公演の感動と、もう生演奏を聴くことができない寂しさを抱えながら帰宅した。

舞台版ぼざろとは何だったのか

味覚

よく『舞台はナマモノ』という言葉を聞くことがある。これはセリフや演技、アドリブが公演を重ねる毎に少しずつ変わっていき、その公演回でしか感じることのできない表現を生み出していくことと解釈していた。
今回、この捉え方が少し変わった。観客のリアクションも、このナマモノが出来上がるうえでの大事な要素と感じた。盛り上がるシーンでの歓声や拍手も舞台の空気を作っているが、特に今回は『拍手しない』シーンが印象に残った。途中で素敵な演奏があったとしても演出の都合で拍手してはいけない。特にそんな注意書きが書かれていなくても、拍手が起きない。それが独特の緊張感を作り上げていた。そして拍手して良いシーンは、今まで抑えていた気持ちが爆発したように、大きな拍手が会場を包んでいた。あの瞬間の一体感は忘れられない。

Show must go on

とは言え全てを生でやっているので、どうしてもトラブルは起きてしまう。トラブルを起こすのが人間であれば、それをリカバリするのも人間だ。舞台の言葉で『Show must go on』というのがあるが、これは一旦物語が始まったらどんな事が起きても最後まで続ける、という精神を表している。実際私が見た公演でも何回か、それぞれ異なったタイプのトラブルが起きていた。しかしキャラクターを崩さず全てアドリブでリカバリしていた。これはキャラクターへの深い理解や稽古の繰り返しが体に染み付いて初めてできることと思っているので、裏の努力に毎回感動していた。

トライアスロン

舞台の感想で誰かが『演技/ダンス/演奏を全て1人にやらせるのはまるでトライアスロンだ』と書いていた。役者さん達はそれぞれの要素で異なる経験があり、得意な要素、不得意な要素は当然ある。しかし、舞台を見てもここは微妙と感じることはなく、全てで高いクオリティを発揮していた。
そういう意味で印象に残っているシーンは、アニメ6話のぼっちちゃんときくりさんが初めて会って路上ライブする場面だ。ぼっちちゃん役の守乃まもさん、きくりさん役の月川玲さんは今回が初の演技のはずなのだが、恐ろしいほど高い解像度で演技や演奏を両立させていた。

”没入”とは

全14回のうちどの公演が良かったか?と言われると難しい。一般的には千穐楽が一番良いとされているが、中には初演の緊張感が良かったと思う人もいるかもしれない。私は6回分しか見られなかったが、感想等を拝見すると14回それぞれで良い点はあるように感じている(素敵なアドリブの感想があり、うわ、現地で見たかったな・・と何度もなりました)。

アニメ版のスタッフが原作の要素を深く理解して12話分の枠に再構築したように、それぞれの公演で『ぼっち・ざ・ろっく!』が深い理解の元で舞台上に再構築されたのなら、それらは全て本物だ。そして舞台を構成する要素の一つに観客という立場として加われたのなら、私はどうしようもなく好きなこの作品の一部になれたのだろう。ありがとう・・

そういえば、山田リョウ役の小山内花凜さんのファンの方の感想で、『またベースを弾いている所を見られて一層感動した』というのがあった。小山内さんは元々バンドでベースを弾いていたのだが、数年前にバンドが解散してしまった。山田リョウも以前のバンドやベースを辞めてしまった設定があり、そういった所がシンクロして更に感動を与えてくれたのだと思っている。

残念ながら、私は今回の舞台を見る以前から知っている出演者というのは居なかった。だからこそ、またあの4人が(もちろんきくりさんも)舞台で演奏している所を見て、同じ気持ちを味わってみたいと思ってしまった。そのためにも、舞台の再演や続編を強く願っています。
(ここまで読んでアンケート書いていない人は居ないと思うけど、もしまだなら希望や応援のメッセージを書きましょう!)

Thank you!

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